「電脳都市ミラビリス」を考え続けた話

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皆さん初めまして、「やせいのもうじゅうとら」こと二月です。
今回「電脳都市ミラビリス」のメインモデラーとしてワールド制作に関わらせて頂きました。
Vketには何度か出展しておりますが、制作サイドでの参加は初めてです。
その体験やワールド制作についての事を記事に起こしてほしいとのお話を受けて、
稚拙ながら筆をとらせて頂きました。

最初にとらこと二月は長文を書くのが苦手です。やせいのもうじゅうなので。
読書感想文は夏休みの最終日に適当にでっちあげるタイプです。
それでも作った作品に対して何も思わない作者はいないので、
全て正しく伝える事は難しくてもここに記しておこうと思います。

ではじめに、参加した経緯ですが、
元々は声をかけてくれたzenさん(ワニでもできる~の人)の
サポートとしての参加を想定していました。
しかし、蓋を開けてみたらメインモデラーとしてお話を頂いていたわけです。
寝耳に水どころではない展開に尻尾を膨らませたとらです。


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けれど丁度仕事を辞めたばかりのタイミングで、
ものづくりに対して「何がどこまで出来るのか」を思いっきり試せる場がそこにあるのに、
断る理由もありませんでしたので「本当に初心者で沢山ご迷惑をおかけするかもしれませんが」
と断った上で参加することを決意しました。

その時に主催のフィオさんから「サイバーパンクのワールドを作る」というコンセプトを伝えられ
ここからワールド完成までのおよそ半年間「サイバーパンクとは」を考え続ける事になります。
それはさておき、まず仕上がってきたコンセプトアートがまずこれです。

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イラストレーター六七質さんによる鮮やかで壮大な未来都市の姿
「あかん、とんでもないものがきた」
「この色どう出せばいいんだ」
「いやもう、ライトとかどうやったらいいんだ」
「スケール感ぇ」
「あ、でもめっちゃ作りたい絶対かっこいいワールドになる」
様々な感想が一瞬で通り過ぎ最後に出てきたのは

「やべえ」

感情になると語彙がなくなるのはとらも同じでした。
とにもかくにも方向性は「このコンセプトイラストのようなサイバーパンクの街を作る」
に定まります。
そしてここでとらはある事に気が付きます。Vket2、Vket3、
どちらにもSFや未来感を反映させた素晴らしいワールドが存在しました。
そこに今回初めて付加された要素があります。

「空」です。

今回初めて「電脳都市」として閉じて完成された空間から、
「発展し続ける開放された空間に広がる街」という要素が出てきたということです。
とりあえず大きくしよう、そして自由に歩き回れるようにしよう。

ミラビリスは「スケール感」と「自由散策」を主軸としました。
何より自分がこの大きな街の中を歩き回ってみたかったのです。

次いで、アングラ要素を入れてほしいという要望に対して「上層」「下層」の二層構造と
メインオブジェを中心に発展する円形歩道型の都市のラフイメージを考えました。


初期のラフモデル
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これが後に「導線をわかりやすく」と「負荷軽減」という
Vketのワールド制作の二大基準と正面衝突したわけですが、
「スタート地点から見えるルックはコンセプトアートに寄せた大スケール空間で見せたいんじゃ」
「終点決めちゃうより見終わった後に色々散策できるようにしたいんじゃ」
は最後までごねてたような気がします。その節はご迷惑をおかけしました。

この時の試行錯誤が後に「上層から折り返して下層につなげる導線」と
「一定基準を満たすと解放され歩き回れるようになる禁止区域」等
ミラビリスというワールドにおける前例のない個性にもなっていくわけですが、
もうここに至るまで「ショートカットルート作る」とか「ゲートで各区画全部区切る」
とか色々やって色々没にしました。
なにせワールドを本格的にゼロから作り上げる事自体が初めての事だったので
「VRで見やすい導線」とか「描画負荷軽減」とか、
そもそも「ライティングわからんなんも…」みたいなとこからやってくわけです。
右も左もわからないとは正にこのこと、
ワールドクリエイト強いマンすごいな…と改めて思い知りました。

導線と大体の配置、街の概要が決まった後はひたすら作る作業だったので
「形が決まったものを作る」は出来るので作っては積んでいく作業です。
ただその間もずっと「サイバーパンクとは何か」
「皆が想像するサイバーパンクの街ってどういうのだろう」
「はたしてこれが正解なのか」ずっと考え続けていました。
ワールドエンドユートピアのテーマ「ポストアポカリプス」と
ミラビリスのテーマ「サイバーパンク」は
リクエストが多く期待度の高いテーマだと聞いていました。

期待度が高いということは、その世界観のイメージ象が
それだけしっかりと根付いていることです。

しかし自分の中にはそれほど多く明確なサイバーパンクのビジョンは描けていなかったので、
考えて、戻って、また考えるを繰り返しながら、少しずつ自分の中のイメージの解像度を
上げていくというような手探りの状態が続きました。

行き詰ってはVRCのサイバー系ワールドを歩き回り、また作業に戻るを繰り返します。
色々と見てすごいアセットや自作のワールドを見ながら
「どこも暗く、雨が降ってるとこが多いな」とか
「鮮やかなネオンと退廃した街の印象が大きい」とか
そのワールドを構成する要素を分解していきます。
「下層は治安が良くないからこっちに寄せよう」
「上層は明るく綺麗ででもどこか人の住む気配を感じさせない街並みにしたい」と
イメージを固めて行きました。
下層は小汚くごみごみしててでも屋台のご飯はきっと美味しそうなんだろうな。
人が地に足つけて生きていくなら多分そうなる。うどん屋もある。

Udon2018
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地に足をつけなくてもよくなったからミラビリスは発展していくのに、
人間はまだそれらを捨てきれていないんだろうな。
隔離され隠された区画にある巨大なパイプ群はその下の大きな廃棄リサイクルの工場に繋がれ、
街の発展と裏腹に下に下にと積まれた裏通りのスラムは
「電脳都市」の裏の顔であり真実でもあります。
「アンダーグラウンド」が前回の九龍帝国から
ミラビリスに引き継がれた要素の一つだったので、
見捨てられた人達ではなく、選べなかった人達は何処に行くのだろうか。

「完璧な存在による自由を与えられた人間が果たして本当に自由になれるのか」
そんな思いを馳せながら「上層」「下層」二つの顔を持つ
ミラビリスを散策して頂けたらなと思います。

立ち入り禁止区画にある裏町の下に連なるスラム街「Mistletoe」
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さて大体煮詰まって来たころに最大の難関が立ちふさがります。
ライティングと質感表現、細部演出です。
ネオン煌めく未来都市そしてコンセプトアートの段階からあった
「明るくビビットなサイバー感を演出する」その最大要素です。
ここらへんはもう全てやって頂いたと言って過言ではなく方々に足を向けて寝られません。
まず指示書とかもまともに作ったことないので、ところどころでzenさんに泣きつきながら
「コンパニオンになるロボット欲しいです」
「遊覧船がどうあがいてもコッペパンにしかならない」
「かっこよいサイバーカーを走らせるにはどうしたら?」
「そもそもメインオブジェのガラス表現が無理」
「テレポーターのUIなんもわからん」
「とらは畜生なのでライティングがわかりませぇん!!!!」
etc

頼れるサブモデラーをはじめとする各プロフェッショナルの皆様にお願いすると共に、
それに付随する細かい仕様詰めと演出方法を考えていかなければなりません。
これはこれで引きこもりコミュ障、人見知りのとらには結構な難易度でした。
自分ひとりでコツコツ作るだけなら「こういったものが作りたい」に
対して答えるのは自分ですが、それを明確に言語化し指示して、
他の人に動いてもらうというのは、完全に別の能力を試されている感じでした。
普段一緒にモデル制作等を行っているzenさんがいかにわかりやすく的確に、
また相手の事を考えて指示回りを作っているのかを思い知るわけですが、
zenさん曰くコツは「慣れ」だそうです。
経験は力なり…

しかし経験を積んでいるのは周りの制作陣も同じで
自分のの雑かつ、かなりふわふわと要領を得ない指示を的確に拾って、
全て「なんすかこれどうやってんすか」「やべえ」と語彙を消失する完成度で打ち返してくる。
そんなサブモデラーさんや、ライティング班、ギミック班の皆様に支えられ、
なんかすっごいシェーダーと、なんかすっごいギミックと、
光の神によるライト演出でなんかもうすごい未来都市になっていくわけです。
この辺何をどうしたとか自分で一切説明できません。
あしからずご了承下さい。

なんかもうすごくなっていくミラビリス
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特に行き詰ってた時に、ある意味でミラビリスの方向性を決定づけた「空」と
上層下層の床面表現の大まかな部分を詰めて下さったるらさんや、
メインオブジェの質感表現やリフレクションの設定などを担当してくださったフレアさん、
導線ラインと大量のネオン看板の表示演出を担当してくれたイリリさんがいなければ、
「完成のイメージ」すら掴めなかったと思います。

ミラビリスはもう
「へなちょこメインモデラーがなんかもうすっごいチートな4巡目くらいの
異世界転生者達にチートしてもらいながら作った」
って感じのワールドですありがとうございました、異世界転生の勇者たち…。


そしてコンポーザーとしてミラビリスのBGMを作って下さったRyo Arueさん。
「上層と下層で二つの顔があり故にスケール感と明るい未来的な都市のイメージから
一転して治安が悪い感じにして頂きたい」
そうして出来上がったのがあの透明感のある美しい出だしからのあのあれです。
途中からのあれです。最高です。
ワールドにBGMが入るとほんとに「世界」になるので、
皆さんも今後ワールドを作る事がある際は是非音にもこだわって頂きたい。

そしてUnity2018年の年が明けない事に焦りながらも細部を詰め、
たまに弱音を吐き、また細部を詰め、抜けたコライダの隙間から落ちては詰め。
入れ忘れたコライダの隙間から落ちては詰め、落ちては詰め。

「親の顔よりも見続けたのでもう自分ではこれが正解なのかまったくわからないけど
出来る事は全部やった」というワールドが完成しました。

感想としては、きっともっと出来る事は沢山あるし、
もっと拘るべきとこも沢山あるし、できなかった事も沢山あったと思います。
「多分これは全てに正解ではない」けれど「全てに正しい正解などない」
常に「最適解」を求めながら「今出せる答えを出す事」

「正解がないということを知る事」
「その上で正解が何かを考え続ける事」

ものづくりにおいて常に自分の中心に置いてある考えのひとつです。
半年間ずっと考え続けた「電脳都市ミラビリス」の
「自分が出せる答え」としてのワールドを完成させました。

もしかすると来場者の思う「サイバーパンク」ではないかもしれない
皆が「コンセプトアート」や先の情報から思い描いた世界とは乖離しているかもしれない。
それはもう考えたらキリのない事ではありますが、
それでもここに、この半年間おそらく誰よりも「電脳都市ミラビリスとはなにか」を考え
試行錯誤し、壁にぶち当たりながら答えを世に出したモデラーがいます。

もっと要領よく出来る人もいるし、もっと出来る事が多い人もいるでしょう。
もっとすごいものを作れる人も世の中には沢山います。
でもこの世界を誰よりも深く考え、模索し、考え抜いた人は自分より他にはきっといません。

ですので、この答えがバーチャルマーケットという場を通じて、
誰かの「正解」に届いてくれたならと願わずにはいられません。


貴方の思う「電脳都市ミラビリス」はここにありましたか?
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